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モービルのバランススコアカード
モービル北米マーケティング&リファイニング事業部
(現:エリクソン・モービル社)(以下モービル)のバランススコアカード導入事例を紹介します。
モービルでは1995年以降原価低減と生産性向上によるコストリーダーシップだけでは競争優位性を継続していくことが困難と考え、「プレミアムガソリンの販売拡大」と「ガソリン以外の商品・サービスによる売上の拡大」を目指しバランススコアカードを導入しました。当時6%だった使用総資本利益率を12%へするという高い財務目標を掲げ、その目標を達成するために財務の視点の戦略目標に収益性向上と生産性向上を設けました。導入から4年後の1998年には使用資本利益率は16%と飛躍的に改善され、バランススコアカードの導入成功例として様々な書籍で紹介されています。
モービルのバランススコアカード導入結果
導入前 | 導入後 | |
使用総資本利益率 (導入4年目 1998年) |
6% | 16% |
利益額 | 最下位 | 最上位 |
売上成長率 | - | 2%アップ |
1ガロンあたりの費用 | - | 20%減 |
環境安全事故 | - | 20%減 |
歩留、設備休止時間 | - | 70%削減 |
従業員の戦略意識、参加意識 | 20% | 80% |
モービルの事例 成功の鍵
戦略や目標と基盤となる顧客の視点、業務プロセスの視点、成長と学習の視点との因果関係を明確にしたことで、経営方針が具体化されたこと | |
具体化されたテーマに指標と定量的な目標値を設定することで、改革の目指すところが明らかになり、かつ改革の進捗状況の管理が可能になったこと | |
全社のバランススコアカードを地域別ビジネス・ユニットへ展開、さらに個人へと展開し最終的には社員ひとりひとりの社員バランススコアカードを策定したことで、全社員が目標と当事者意識をもって改革に取り組む風土が醸成されたこと |
モービルの戦略マップ
モービルの作成したバランススコアカードについて戦略目標を戦略マップ化したものを紹介します。また戦略目標に対する重要成功要因と業績評価指標を一覧表にてまとめました。
視点 | 戦略目標 | 重要成功要因 | 業績評価指標 |
財務の視点 | 使用総資本利益率の増加 | 実際の使用総資本利益率 業界他社と比較した利益額 |
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収益性向上 | ガソリン以外の収益源の掘り起こし |
ガソリン以外の売上高 ガソリン以外の利益 |
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プレミアム商品の販売による顧客収益性の向上 | 業界他社と比較した販売量 普通対プレミアム・ガソリン |
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生産性向上 | 業界でのコスト・リーダーシップの確立 | 業界他社と比較した1ガロンあたりコスト | |
既存資産の最大活用 | 事業計画に比較したキャッシュフロー | ||
顧客の視点 | 顧客満足 | (基本要因) 清潔 安全 高品質 ブランドの信頼性 (差別化要因) 迅速なサービス 友好的かつ親切な従業員 顧客ロイヤリティーの認識 |
覆面買い物客による評価 ターゲットとする顧客 セグメントの市場占有率 |
ディーラーとの相互満足 | 更なる顧客志向製品の提供 ディーラービジネス・スキル向上の支援 |
ディーラーの利益性向上度 ディーラー満足度 |
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業務プロセスの視点 | フランチャイズの組織化 | ガソリン以外の製品やサービスの開発 | 新製品投資利益率 新製品受入比率 |
顧客価値の創造 | 顧客セグメントの理解 | ターゲット市場の占有率 | |
最適なフランチャイズの組織化 | ディーラーの質評価指標 | ||
業務プロセスの視点 (財務の視点を指示) |
卓越した石油精製業務 | 設備稼働率の向上 | 精製工場の歩留率 予期せぬ設備休止時間 |
納期の厳守 | 遅延回数 | ||
在庫管理の向上 | 在庫水準 在庫切率 |
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業界でのコスト・リーダーシップ | 業界他社と比較したアクティビティ・コスト | ||
良き隣人 | 環境および安全性の向上 | 環境関連事故数 安全関連事故数 |
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学習と成長の視点 | 前向きな組織風土 | 企業目標と個人目標の整合性 個人の成長 |
個人のバランススコアカード 従業員のフィードバック |
従業員のコンピタンス(技術や能力) | 従業員能力アップ リーダーシップ力の強化 従業員の総合的視野の育成 |
戦略的業務装備率 | |
技術のインフラ | 業務プロセス促進の為に新技術の導入 | 戦略的情報システム装備率 |
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参考:
「バランス・スコアカード入門」 吉川武男著
「図解バランス・スコアカード」 松永達也著